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インスリンの老化における役割  [Science]

Cutting Edge Biotech News Germany Vol.1 2008
インシュリンの老化における役割
フライブルグ 2008年3月21日 
(キーワード:線虫、SNK-1、SGK-1、酸化ストレス)

インシュリンの新しい機能として、老化における役割が見出された。インシュリンは、糖尿病と関係していることが知られている。フライブルグのアルバート・ルードヴィックス大学の研究者は、インシュリンのこれまで知られていなかった新しい機能として、インスリンが老化と寿命に影響することを見出した。 Ralf Baumeister氏率いる研究者のグループが、ボストン(米国)のハーバード・メディカル・スクールとともに、専門誌Cellで報告した。インシュリンは、最も重要な細胞ストレス調節装置(SKN-1タンパク質)のうちのひとつを明らかに阻害する。

4年前にフライブルグの同グループは、線虫C. elegansの実験から、酵素(SGK-1)を含む系を見出していた。今回の結果は、インシュリンが老化において明らかに重要な役割を果たしていたのと同様に、特定の状況の下で想定していたより強く酸化ストレスの有害な効果に対する防衛手段を弱めることができることを示唆する。研究者は、SKN-1活性の正確な調節を通して慢性疾患の増加を予防し、究極的には寿命に影響を及ぼすことを期待している。「SKN-1を活性化するだけで、虫はより長く生きることができる」、バウマイスターを説明する。今後はマウスにおける更なる実験を通して、この効果が他の生物種においても再現性が確認できることを示す必要がある。


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結核菌の細胞膜に科学者驚き [Science]

Cutting Edge Biotech News Germany Vol.1 2008
結核菌の細胞膜に科学者驚き
Martinsried 2008年3月24日
(キーワード:ミコール酸、ハイバーネーション、phoP)

ヒト結核菌は眠れるドラゴンである:世界中でおよそ100,000人もの人々が毎日に病原体に感染している。しかしながら、桿体形の細菌はほとんどの場合い直ぐには致命的な疾患を誘発することはない。さらにまた、病原体はほぼ無敵である保護層を持つため、治療をすることは非常に困難である。感染研究者ローベルト・コッホによる病原体の最初の発見から126年後の今日においても、病原体の外被膜の構造の詳細については様々な意見が存在している。結核の謎を解くパズルに残されていたいくつかのヒントが、3月にMartinsriedのMax Planck Biochemistry研究所のHarald Engelhardt氏の指導のもと科学者たちによって発見された。専門雑誌PNAS(オンライン、2008)において、構造生物学者は初めて外側細胞壁の三次元イメージを提示した。この結果は初期の仮説を変えるものであった。
 今日、毎年1000万人もの人々が結核に悩まされており、そして毎日、約4000人の結核患者が疾患の結果として死亡している。内科療法は長く、予防接種による予防は不十分なままである。さらには、現在の治療方法が病原体の耐性菌の発現をも助長している。このような背景のもと、世界中の研究グループは結核菌が属する「抗酸性桿体」細菌を研究しており、結核と戦う新しい方法を探している。毎年3月24日に開催される世界結核の日には、この疾患に対する注意を喚起することを目的としている。今年はベルリンで2日にわたる結核シンポジウムが開催され、国内外の専門家が参加した。ヒト結核菌は、複雑な細胞膜によって保護されており他の分子を寄せ付けない。この構造が結核菌が属するマイコバクテリウム属に外部環境や抗菌剤に対する抵抗性を付与し、薬物療法を一層困難なものにしている。
 構造生物学者は長年この細胞壁を研究してきた。しかし、ローベルト・コッホの発見の126年後でさえ、この領域は不完全または矛盾した仮定が存在しており、統一的な見解には至っていない。 細胞壁は、長く鎖でしっかりと結合した脂肪酸 ― ミコール酸 ― の弾性エネルギーが不可欠な要素であることはよく知られている。これ以外には、全体像がどうなのかは不明なままである。これまでのところ研究者は、ミコール酸は決定づけられた二重の被膜の閉じた皮膜を構成するか、特に厚く非対称的な内被膜を作るものと仮定してきた。

新しい分析が以前の仮説を覆す
 Max Planck Biochemistry研究所のEngelhardt氏のグループは、最近の実験結果をもとに従来の仮説を覆す新しい仮説を検討している。彼らはいわゆる凍結電子断層撮影を使用して、他の病原微生物ヒト結核菌の近親であるマイコバクテリウム・ボビスBCGで牛の結核を誘発した。これには、スメグマ菌やコリネバクテリウム・グルタミクムの解析も含めた。この研究所で開発された凍結電子断層撮影の技術は、生菌の二重膜構造から最初の三次元像を造ることを可能にした。これらの技術を使って凍結細胞からさまざまな角度からの投射が生まれ、イメージの数、鮮明度とコントラストの至適値が見出される。
 細胞の破壊を防止するために、検体は-190°Cで冷却され電子線で非常に短い時間照射される。PNAS(オンライン、3 Mar 2008)で報告されているように、これらの断層撮影データは全く予想外の結果を示した。すなわち、マイコバクテリアの細胞壁は明らかに脂質二重膜からなるということが明らかになった。しかしながら、この構造上の性質は、以前の仮定と結びつきを非常に困難なものにしている。これを考慮して、研究者は凍結または未処理の厚さ3500万分の1ミリメートルの薄い細胞スライスを使用し、それらの結果を検討した。ミコール酸が外膜を細胞壁に固定するという点に限っては、Harald Engelhardt氏も従来の仮説に賛同する。「しかしながら、細胞膜は従来我々が考えていたものとは異なる。脂質膜のミコール酸および他の脂肪酸は、我々が予想したものとは異なる構成である」と構造生物学者は説明した。現在、科学者たちは、膜とりわけ物質輸送に関連する外膜に関して新しい知見に基づく新しい見解を構築しており、今後これらの知見は化学療法薬剤の開発にとっても重要である。「究極的に薬物はできるだけ効果的にマイコバクテリウムの細胞壁中を、そして活性のそれらの位置にたどり着く必要がある。そのためには、我々が細胞皮膜のより詳細な理解を必要としている」、エンゲルハートを言う。

遺伝子レベルに基づく病原体のハイバーネーション
 結核治療の可能性に関して、ベルリンにある感染生物マックス・プランク研究所のドイツの感染症生物学者Stefan Kaufmann氏は、最近更に新しい発見をした。Kaufmann氏らは、このハイバーネーションに影響を与える遺伝子変異を見出した。彼らが専門誌Cell Host and microbe jouronalで報告したように、結核菌は、不完全なphoP遺伝子を含むときは無害である。しかしながら、この遺伝子が機能するときにバクテリアは病原性を発揮する。これらのことから、明らかにPhoPは通常ハイバーネーションに関する特異的な遺伝子の活性を抑制する。薬が開発されるかどうかは別として、この遺伝子発現をオフにするメカニズムが標的として研究されていない。「いずれにせよ、我々は迅速に、ハイバーネーションの細菌を攻撃することができる薬物を必要としている。これだけで、6ヶ月という長い治療時間を有意に短縮することができる。」とKaufmann氏は述べた。
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再生医療:心臓繊維を簡単に増殖 [Science]

Cutting Edge Biotech News Germany Vol.1 2008
再生医療:心臓線維を簡便に増殖
ミュンヘン 2008年3月3日 
(キーワード:心臓細胞、MesP1、細胞分化の効率化)


ミュンヘンの研究者が、心臓線維を簡便に増殖させることに成功した。胚性幹細胞は、実際の臨床応用の目的としては未だに研究段階にある。これを臨床へ応用するためには、まず全分化能を持った胚性幹細胞を、心臓細胞または神経細胞に選択的に分化できなければならない。現在のところその成功率は低く、心臓細胞または神経細胞に分化できた胚性幹細胞はわずか10パーセントにすぎない。

The University of Munich clinic(ミュンヘン大学病院)出身のRobert David氏とWolfgang-Michael Franz氏が率いるドイツの研究者たちは、この変化効率を有意に高めるため、遺伝的トリックを施した。彼らは専門誌Nature Cell Biologyにおいて、拍動する心臓細胞への変換効率を今までの5-6倍の60パーセント程度まで上げることに成功したと報告した。この成果は、心臓の分化を分子的側面からより良く理解したうえで、それらの知見に基づき心臓に特有のタンパク質(MesP 1)を選択的に利用することで達成された。研究者は、目下、胚性幹細胞からできるだけ正確にこれらの『プログラムされた』心臓細胞を取り出すことに取り組んでいる。

「患者のみなさんが将来この現象から利益を得ることができるように、研究成果を純化した細胞株へ応用する必要がある。そして、それらの細胞株は海外からのみ得られることができる」とFranz氏は強調する。しかしながら幹細胞のドイツにおける利用には、現在ドイツ議会で討議されているドイツ幹細胞法の自由化を前提としている。
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脳卒中ネットワーク、ドイツにて統合 [Science]

Cutting Edge Biotech News Germany Vol.1 2008
脳卒中ネットワーク、ドイツにて統合
ベルリン/マンハイム 3月12日 
(キーワード:真性脳卒中、ARISE、ESN)

欧州の脳卒中ネットワークが、ドイツにて統合された。脳卒中領域の2つの主要プロジェクトが、欧州連合より合計2200万ユーロの資金提供を受け今後5年間ドイツにおいて中央管理される。

ベルリンのCharit University Medicine実験神経学部(the Department of Experimental Neurology at the Charit University Medicine Berlin)のUlrich Dirnagl氏が、「脳卒中からの回復の提供(ARISE:Affording Recovery in Stroke)」コンソーシアムを監督し、一方、マンハイム大学神経診療所(the Neurological University Clinic Mannheim)においては、「真性脳卒中(Eustroke)」プロジェクトが、マネージャーで上級医師でもあるStephen Meairs氏によりコーディネートされる。これは、ESN: European Stroke Network(ヨーロッパ脳卒中ネットワーク)を発展させることを意図しており、12の異なる国から主要な研究者と臨床医を結びつける。

主な研究課題としては、以下のような内容があげられている。
1.脳内の血栓をできるだけ穏やかに分解するためには、どのような革新的な方法を開発できるか?
2.脳卒中の発現と進行に、どの因子が影響を及ぼしているのか?
3.脳の傷害性領域の再生に、どの治療アプローチが利用できるか?

このプロジェクトは、ベルリンで3月11日まで開催されていた3つの関連ワーキンググループによる会議においてスタートした。
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新しい免疫系メカニズムが明らかに [Science]

Cutting Edge Biotech News Germany Vol.1 2008
新しい免疫系メカニズムが明らかに
ベルリン 2008年3月7日 
(キーワード:B細胞、抗体産生、マイクロRNA) 

新しい免疫系メカニズムが明らかになった。B細胞は、免疫系の重要な構成要素で、白血球(リンパ球)に属し、骨髄でつくられる。感染が起こると、B細胞は細菌やウイルス他の病原体を攻撃するために、オーダーメイドの抗体を産生する。しかしながら、B細胞がこれらの抗体を産生できるようになるためには、B細胞受容体の形成という複雑な発達過程を経なければならない。このセンサ(受容体)により、B細胞はさまざまな病原体を感知して、適切な抗体を産生する。B細胞の受容体遺伝子のDNA基礎単位がランダムに組み合わさることにより、極めて多様な抗体が作製され、広範囲の病原体から人体を守ることができる。

 米国ボストンのマサチューセッツ州にあるハーバード・メディカル・スクールと、ベルリン-ブーフのMax- Delbrck分子医学センターの研究者らは、抗体の成熟を制御する新たな機序を発見した。ドイツ人遺伝学者Klaus Rajewsky氏と並んで著名な彼の息子のシステム生物学者Nikolaus Rajewsky氏(Max-Delbrck分子医学センター)率いる研究グループは、専門誌Cellにおいて、マイクロRNAが、抗体の多様性獲得における役割と同様に、B細胞の成熟過程における生存にも明確に関係していることを報告した。
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